この病気は、気分がゆううつになり、活動力も著しく低下し、喜怒哀楽の感情もわかりにくくなり、本人は過去の出来事にこだわり、後悔したりしているうちに、不眠、不安、いらいら、自殺念慮が出現してきて、不幸な結末に至ることもありうる病気です。時には、身体症状からはじまり、内科などで自律神経失調症と診断される場合もあります。
先にも書きましたが、昔はうつ病になりやすい性格傾向などが盛んに取り沙汰されましたが、今では、誰がこの病気になってもおかしくないといわれ始めています。年間自殺者が3万人を越えてから、とりわけ1998年には前年と比べて1万人以上の増加を示すようになってからは、ストレス社会におけるうつ病の遍在に目が向けられ、早期発見、早期治療の必要性がますます重要になってきています。
基本的にうつ病は、薬物療法と休養で治る病気です。われわれは、うつ病の抑うつ気分をある程度体験可能であるために、それを気のせい、一時的な不調とみなしがちですが、そうではありません。うつ病は「病気」であるということにしっかり目を向けてください。1回の経過は、およそ3~6ヶ月ですが、抗うつ薬の服薬はもう少し必要です。
この病態は、現在の国際疾病分類では、さまざまな特徴的な症状の一群に分類され、神経症という病名は消滅してしまっていますが、臨床的に使いやすい病名であることから、いまでも神経症というカテゴリーは巷では有効です。
この病態の基本は、「不安」と「恐怖」と「強迫」という3大症状に集約されるでしょう。パニック発作や外出時の恐怖(ひとりでは不安で外出できない。時には吐き気やめまいの症状がでる)や戸締りや清潔さを確かめなければ気の済まないという確認強迫は、皆さんもご存知のことでしょう。この状態は、いわば社会のなかで存在していくことが困難であること、すなわちある状況への適応不全から出来しているとみなすことができます。治療的には、薬物療法や精神療法や行動療法やカウンセリングによって不安の解消をめざします。
さまざまな症状がありますが、その中でも、幻覚と妄想が主たる症状になります。もう少し詳しく言うと、幻覚の中でも幻聴が圧倒的に多く、話しかけてくる、ないしは自分のことを誰かが話題にしている言葉による幻聴が目立ちます。妄想は、本来なら自分にしかわからない心の深奥の出来事が世間に筒抜けになってしまったり、逆に他人や外界の出来事が、普通なら起こらないかたちで本人の行動に影響を与えたりする体験(電波で伝えてくるとか本人の身体感覚の違和感を引き起こしたりする)が生じてきます。
さらに、無気力や集中力の減退をきたしたり、社会的にひきこもってしまったり、感情の反応が不適切になったりします。
このような症状がふつう1ヶ月以上続く場合、この病気を疑います。
治療的には薬物療法が第1選択になります。最近は、非定型抗精神病薬も登場し、この病気の特徴である発動性の低下にも効果があり、副作用も少ないといわれていることから、薬物療法の可能性の幅が増えつつあります。病状が安定してきたら、精神療法的アプローチが可能となり、さらには精神科リハビリテーションを行い、社会復帰、さらに社会経済活動への復帰を目指すことになります。
この病気もストレスによる再燃が問題になってきます。いかにストレスに対処(コーピングといいます)していくかが、薬物療法の維持と共に予後を決定しています。
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